最後のとき

もうすぐ1年間の育児休業が終わり、我が子が保育園という社会への一歩を踏み出します。妊娠中、私は「ずっと家の中にいるなんて無理。すぐに職場復帰しよう」と思っていました。けれど、実際に子どもが生まれると、一日一日があっという間に過ぎ、気づけば一年。子どもと過ごす時間が愛おしく、楽しくて仕方がありませんでした。
幸いにも、産後うつにはなりませんでした。それは、周囲の支えがあったからです。特に夫の存在は大きく、私が「今日は何もできなかった」と落ち込むと、「一日中、子どものお世話をしてくれてありがとう」と言ってくれました。その言葉に、「私はこの子を無事に守れた」と、自分を肯定することができました。そして、もうひとつの支えが「子育てサロン くるみ」でした。心の中のモヤモヤを受け止めてくれるその場所は、いつしか私の大切な居場所になっていました。

育児は、終わりの見えない日々の連続です。疲れ果てることも、悩むことも数えきれません。でも、ある詩に出会い、その考えが少し変わりました。作者不明のその詩は私の心に深く刺さりました。『最後のとき(The Last Time)』。それは、いつか訪れる”最後の瞬間”を描いた詩です。抱っこをせがまれるのも、夜中に泣き声で起こされるのも、手をつないで歩くのも、すべてに「最後のとき」がある。何げない日常が、知らないうちに『最後』になってしまう、そのことに改めて気づかされました。震災で大切な人との別れを経験した私にとって、この詩の言葉は一層深く心に刻まれました。

我が子が生まれて、私の世界は大きく変わりました。日常の些細なことから、自分の幼少期、社会への眼差しまで、あらゆるものが新しい視点を持ちました。今日の遊び場、夜ごはんのメニュー、眠る前の絵本。毎日は嵐のように過ぎていきます。でも、そのひとつひとつがかけがえのない時間であり、振り返れば宝物になるのだと感じています。夜、すやすやと眠る我が子の姿を見て「今日も無事生かせた」と安心する。そんな毎日を、とても楽しく、そして尊いものだと感じます。そんな風に思えるのは、支えてくれる家族やくるみ、見守ってくれる支援センターの方々、そして同じく子育てに奮闘する友人たちのおかげです。

これからも、子どもとの時間をひとつひとつ大切に、心に刻みながら過ごしていきたいです。そして、いつかこの子が成長したとき、「私の子ども時代は、たくさんの笑顔と安心に包まれていた」と心からそう思えるように。

1歳児のママ

「最後のとき(The Last Time)」

赤ちゃんをその腕に抱いた瞬間から
あなたはこれまでとは全く違う人生を生きる
以前の自分に戻りたいと思うかもしれない
自由と時間があって心配することなど何もなかったあの頃の自分に
今まで経験したことがないほどの徒労感毎日毎日まったく同じ日々
ミルクを与えて背中をさすってやりおむつを替えては泣かれて
ぐずられて嫌がられて昼寝をしすぎてもしなくても心配で
終わることのない永遠の繰り返しに思えるかもしれない

だけど忘れないで……
すべてのことには、「最後のとき」があるということを
ご飯を食べさせてやるのはこれが最後、というときがやってくる
長い一日のあと子どもがあなたの膝で寝てしまう
だけど眠っている子どもを抱くのはこれが最後
子どもを抱っこ紐で抱えて出かける
だけど抱っこ紐を使うのはこれが最後
夜はお風呂で髪を洗ってやる
だけど明日からはもう一人でできると言われる
道を渡るときには手を握ってくる
だけど手をつなぐのはこれが最後
夜中こっそり寝室にやってきてベッドにもぐりこんでくる
だけどそんなふうに起こされるのはこれが最後
昼下がりに歌いながら手遊びをする
だけどその歌を歌ってやるのはこれが最後
学校まで送っていけば「行ってきます」のキスをしてくる
だけど次の日からは一人でだいじょうぶと言われる
寝る前に本を読み聞かせて 汚れた顔をふいてやるのもこれが最後
子どもが両手を広げて あなたの胸に飛び込んでくるのもこれが最後

だけど「これが最後」ということはあなたには分からない
それがもう二度と起こらないのだと気付くころには
すでに時は流れてしまっている
だから今、あなたの人生のこの瞬間にも
たくさんの「最後」があることを忘れないで
もう二度とないのだと気付いてはじめて
あと一日でいいから、あと一度きりでいいから、と切望するような
大切な「最後のとき」があることを

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