大人へ贈る絵本 ~あなたのための絵本~
みなさん、こんにちは。絵本専門士の水野有子です。
このコラムでは大人のみなさんに贈りたい絵本をテーマごとに紹介します。良い絵本は年齢に関係なく心に響くものです。自分のために、家族のために、絵本と触れ合うひとときを過ごしてみませんか。
最後のテーマは【あなたのための絵本】です。
おかあさんだもの
「お母さん」に限らず老若男女すべての人に読んでもらいたい本書。「お母さんだから」という責任感ではなく、「お母さんだもの」とみずからが 思うとき、そこにはきっと大きな力がみなぎっているのだと思います。すべてのいのちは「お母さん」から生まれます。誰もがこうして生を受け、大切に育まれてきたことに気づけたら、世界はもっと優しさに満ち溢れるのではないでしょうか。人生の折々で読み返したい絵本です。
ちいさなあなたへ
アリスン・マギー(ぶん) ピーター・レイノルズ(え) なかがわちひろ(やく) 主婦の友社 2008年刊
わが子が生まれ、成長し、親元を離れ 、自分の家庭を築いていく。そんな長い年月を「母」という存在を軸に描いた作品。娘として、母として、そして祖母として。その時々読者の置かれている状況により、本書から受け取る印象は大きく異なります。そういう意味でも、まさに「座右の絵本」に相応しい一冊と言えるのではないでしょうか。もちろん母親だけではなく、大切な家族がいるすべての人の心に響く絵本です。
あなたのことがだいすき
えがしらみちこ(文・絵) 西原理恵子(原案) KADOKAWA 2018年刊
上手くいかない。余裕がない。優しくしたいのにできない。そんなママの気持ちをストレートに描いた本書。子育ての先輩に相談すると、「大変なのは今だけ」「過ぎれば笑い話だ」なんて言われることもありますが、そうではなくて、まさに「今」なんとかしてほしいと感じている のですよね。その「大変な今」に寄り添ってくれる本書は、きっとあなたにとってお守りのような存在になるはずです。ふとした時に読みやすい手のひらサイズの絵本です。
おくりものはナンニモナイ
パトリック・マクドネル(作) 谷川俊太郎(訳) あすなろ書房 2005年刊
何が欲しいかな、足りないものはあるかな、自分が贈られたら嬉しいものって何だろう。誰かに何かを贈ろうとあれこれ考えてみても なかなか思いつかない、そんな経験はありませんか? 何でも持っている友だちのアールにプレゼントを贈りたいと考えたムーチは、悩みぬいた結果「ナンニモナイ」を贈ります。「ナンニモナイ」って何でしょう。ぜひ本書を読んで確かめてくださいね。きっとあなたも、「ナンニモナイ」を誰かにあげたくなりますよ。
Life ライフ
くすのきしげのり(作) 松本春野(絵) 瑞雲舎 2015年刊
町はずれにあるその小さなお店は、誰かが働いているわけでも、何かを売っているわけでもありません。不要になったものを置いていき、必要なものをもらって帰るお店です。例えば一冊の絵本。どこかの小さな子のために置かれたそれは、何人かの子のもとを経て、親となった最初の持ち主の子どもへと受け継がれていきます。小さな 優しさの連鎖は、きっとすぐそばにあるのでしょう。人と人はつながっているのだと感じられる絵本。