大人へ贈る絵本 ~子育てに少し疲れたら~
みなさん、こんにちは。絵本専門士の水野有子です。
このコラムでは大人のみなさんに贈りたい絵本をテーマごとに紹介します。良い絵本は年齢に関係なく心に響くものです。自分のために、家族のために、絵本と触れ合うひとときを過ごしてみませんか。
今回のテーマは【子育てに少し疲れたら】です。
どうしてそんなにないてるの?
あやしても、ミルクをのんでも、おむつを替えても、赤ちゃんが一向に泣き止まないときがあります。「泣くのが仕事」といったって、この小さな体のどこにそんな体力があるのかというほど延々泣かれては、周りもヘトヘトになってしまいますよね。そんなときに触れてほしい絵本がこちら。本書は52歳で一児を授かった著者が、赤ちゃんのぐずる気持ちを想像して描いた作品です。赤ちゃんにとって、世界は何もかもが「初めて」です。そんな世界と呼応する手段のひとつが泣くことなのかなと思えてきます。
りんごがひとつ
りんごがひとつありました。みんながそれを欲しがって…。ページのめくりによる場面展開が秀逸な本書。のんびりした絵で描かれるほのぼのストーリーかと思いきや、最後にぐっと心打たれます。価値観や考え方の基準はひとそれぞれですから、すれ違うこともままあります。でも本書のように、地域の宝、社会の宝である子どものため、お互いが許し合い、認め合うことができたら…。そんな世界に触れることで、心がほんのりあたたかくなる絵本です。
ちいさいわたし
かさいまり(さく) おかだちあき(え) くもん出版 2013年刊
見守ることの大切さはわかっていても、何でもやりたがるわが子にやきもきしたり、イライラしたり。そんな時は本書を読んでみてください。今はまだできないけれど、いつかできるようになる。子どもはその「途中」にいます。そうだよね、大丈夫。わが子の成長に嬉しさと少しの寂しさを感じつつ、きっとそんな風に呟いてしまいますよ。加えて本書には、「いつか」にしてはならない大切なことも。大人が子どもから学ぶことは数多くあると思い知らされます。
おかあさん、すごい!
子どもを授かったとき、真っ先に浮かんだロールモデルはやはり自分の母親でした。時代や状況が異なることはわかっていながら、もっとも身近な「母親像」を思い起こしては、不甲斐ない自分と比べてしまうことも。本書には、(子どもから見れば)何でもできるお母さんの数々の失敗が描かれています。子どもが一歳なら「お母さん」もようやく一歳。失敗を繰り返しながら、子どもと一緒に少しずつ成長していけるといいですね。
おこだでませんように
くすのきしげのり(作) 石井聖岳(絵) 小学館 2008年刊
子どもの気持ちがわからない。そんなふうに思うことはありませんか。本書の表紙には横を向いて涙をこらえる男の子。少し不器用で誤解されやすい彼は、七夕の短冊にある願いごとをします。子どもが成長してある程度意思疎通ができるようになると、大人は気づかないうちに自分たちの基準で物事を進めてしまい、彼らの気持ちを取りこぼすことが多くなるように感じます。なんだか最近余裕がないな、と思った時に読みたい絵本です。