大人へ贈る絵本 ~新しい家族を迎えるみなさんへ~
みなさん、こんにちは。絵本専門士の水野有子です。
このコラムでは大人のみなさんに贈りたい絵本をテーマごとに紹介します。良い絵本は年齢に関係なく心に響くものです。自分のために、家族のために、絵本と触れ合うひとときを過ごしてみませんか。
最初のテーマは【新しい家族を迎えるみなさんへ】です。
あかちゃんのゆりかご
- レベッカ・ボンド(作) さくまゆみこ(訳) 偕成社 2002年刊
妊娠がわかった日、家族は大喜び。さっそく赤ちゃんのためのゆりかごを作り始めます。丁寧に鉋(かんな)をかけて、ペンキを塗り、小さな布を縫い合わせ、楽しいモビールをつけて…。家族ひとりひとりが力を合わせて完成させた素敵なゆりかごに、足りないものなんて何一つありません。新しい家族を迎える喜びを目一杯感じられる絵本です。
おへそのあな
- 長谷川義史(作) BL出版 2006年刊
赤ちゃんはおなかのなかでどんなふうに過ごしているのでしょう。本書はおへその穴から家族をのぞく胎児の視点で描かれています。いろんな音がするな、あれはお兄ちゃんかな、これはなんの匂いだろう。穴から見えるのは、赤ちゃんを心待ちにしている家族の様子。うちの子もこんな風にのぞいているのかしらと想像すると、なんだか嬉しくなってきませんか? ラストには赤ちゃんからの素敵な「予告」のプレゼント。ぜひ妊娠中に家族で読んでみてください。
おとうさんがおとうさんになった日
- 長野ヒデ子(作) 童心社 2002年刊
妊娠・出産を「体験」するわけではない男性にとって、「お父さんになった」という実感を得るのは少し時間のかかることなのかもしれません。ではお父さんは、いつ「お父さん」になるのでしょう。実際に赤ちゃんを産むお母さんとはちょっと違うけれど、まぶしくて、くすぐったくて、いつもの景色が違って見えて、そして不思議な力がわいてきて…。「これからお父さんになる人」の気持ちに寄り添ってくれる絵本です。
どんなにきみがすきだかあててごらん
- サム・マクブラットニィ(文) アニタ・ジェラーム(絵) 小川仁央(訳) 評論社 1995年刊
お互いどれほど相手が好きかを体いっぱいに表現しあうチビウサギとデカウサギ。「好き」に大きさや深さは関係ないかもしれないけれど、「こんなに好き!」と表したい気持ち、わかりますよね。一般的に「父子」として捉えられることの多い彼らの関係性ですが、実は原文でもはっきり示されていません。子どもはもちろん、家族や大切な人への愛情表現としても読むことのできる作品です。
ちょっとだけ
- 瀧村有子(さく) 鈴木永子(え) 福音館書店 2007年刊
弟妹が生まれるときはこちらの絵本を。赤ちゃんが生まれて上の子が我慢するという内容の作品はよく見かけますが、本書は「ちょっとだけ」違います。ひとりでコップに牛乳を入れたり、ひとりでパジャマのボタンをとめたり。いつもママがやってくれるのを見ているので、初めてのことも「ちょっとだけ」成功します。みずから行動し手に入れた「小さな成功」を誇る女の子と、そんなわが子に寄り添うママの思いやりに心が温かくなります。