保育園から届く真心の言葉
私の勤めている子育て支援センターは、隣の保育園と玄関を共有しています。
玄関に入って少し広めの廊下には、右手の奥に金魚鉢が置かれ2匹の尾の長い金魚がいます。左手には、給食献立ケースが置かれ、その日の給食が展示されています。そこには、朝、わが子を送ってきたお父さんお母さんの、あわただしく職場に向かう姿があります。なかなか、親御さんと離れがたい子どももいれば、「早く迎えにきてね」と笑顔で手を振る子どもの姿もあります。
いつもの朝の風景です。
夕方になりお迎えの時間となると、朝とは違った親子の姿が見られます。
仕事を終えて、ほっとした様な表情のお父さんお母さんがわが子と帰り際、この場所でほのぼのとした会話が支援センターに届きます。
展示されている給食を指差しながら「これ ぜんぶ たべた!」と報告する子ども。きっと褒めてもらうことを期待しながらの報告ですね。
「ホントに?えらいね!全部食べたの。」の言葉に満足そうな表情を見せます。
時々「ホントに食べたの?これ家で食べないしょ」のお母さんの声にクスっと笑える声も届きます。
その日の給食の話題から、金魚を眺めての親子の語らいも聞こえてきます。
「おおきい!」「大きくなったね」「ごはん」「ご飯食べたのかな?」と子どもの言葉に一生懸命応えようとするお父さんお母さん。金魚が病気になった時には
皆さん心配していました。大人も子どもも。幸いに病気が治り元気を取り戻した時には、「あ~ちゃんと泳いでいる」と笑顔の親子。
ある時、「おかあさん うんち かわいい」と言った子どもがいました。
「金魚のうんちがかわいい?」この言葉は、大人にとって不可解かもしれません。でもその子のお母さんは「あ~かわいいね」と笑顔で応えていました。
このやり取りを聞いていた私は、ある事を思い出しました。
日本語研究者の金田一秀穂・杏林大教授がある講演で。無駄に思える会話こそ美しい日本語が宿ると。よく問われるという「美しい言葉」については「知識や情報でない、人と人を結ぶ『無駄な言葉』です」と。
しゃべれない赤ちゃんに効率や見返りを求めずに語りかける母親の言葉は・・
「魂の発露の言葉で美しい」として「真心からでる言葉は、周囲を幸せにする。
そういった言葉を使ってほしい」と。私は、支援センターにいて、保育園に通う親子の言葉を聞きながら、笑ったりなど幸せな気持ちにさせてもらっているなと思うのでした。
柳町子育て支援センター